Home > Itagaki's > キャラクターアーティスト対談

キャラクターアーティスト対談

2010.03.29

ヴァルハラゲームスタジオのロゴ

          キャラクターアーティスト、エフェクトアーティストの方々と板垣さんの対談を始めさせて頂きます。みなさん、よろしくお願いいたします。
一同 よろしくお願いします。
          それでは自己紹介をお願いします。
原川 原川知之といいます。キャラクターアートチームのリーダーをしております。3Dキャラクターモデルの作成、コンセプトアートの作成、それからキャラクターアートチームのワークフローやスケジュールの策定をしています。
キャラクターアートリード 原川 知之
代表作品:
・NINJA GAIDEN 2 (Xbox360 / 2008) キャラクターアーティスト
・DEAD OR ALIVE Xtreme 2 (Xbox360 / 2006) アイテムモデラー
・DEAD OR ALIVE 4 (Xbox360 / 2005) キャラクターアーティスト
(以上全て、テクモ株式会社 開発・販売)
藤木 藤木伸幸といいます。キャラクターアートを担当しています。3Dモデルの作成の他に、色々な検証をしてレポートにまとめたりしています。
キャラクターアーティスト 藤木 伸幸 (株式会社アバンより出向)
代表作品:
・バーチャファイター 5 (業務用 / 2006) キャラクターアーティスト
(株式会社セガ 開発・販売)
・他10タイトル以上のハイエンドなキャラクター制作に携わる。
片倉 片倉です。キャラクターの3Dモデリングと、コンセプトアートを描かせて頂いています。
キャラクターアーティスト 片倉 泰輔
代表作品:
・モンスターファーム4 (PS3 / 2003) キャラクターアーティスト
・アルゴスの戦士 (PS2 / 2002) キャラクターアーティスト
・モンスターファーム (PS2 / 2001) 背景アーティスト
(以上 テクモ株式会社 開発・販売)
・パチスロ (2004~2008)
- リオシリーズ 背景アーティスト (C)NET CORPORATION (C)TECMO, LTD.
他10タイトル以上 背景アーティスト
・バスト ア ムーブ 2 ダンス天国MIX (PS / 1999) 背景アーティスト (C)METRO/フレイムグラフィックス/FBIJ/エニックス
平紙 エフェクトアーティストの平紙です。主にエフェクトの作成をしていますが、UIのアートなども手掛けています。会社のロゴや名刺は僕が担当しました。
エフェクトアーティスト 平紙 大資
代表作品:
・NINJA GAIDEN 2 (Xbox 360 / 2008) UIアーティスト
・NINJA GAIDEN Σ (PS3 / 2007) UIアーティスト
・DEAD OR ALIVE Paradise (Mobile / 2006) アーティスト
・お宝ダンジョン (Mobile / 2006) アーティスト
・とらのあなWEBサイト (Mobile / 2005-2007) WEBデザインリード
・もえすご。 (Mobile / 2004) アーティスト
(以上全て、テクモ株式会社 開発・販売)
          ヴァルハラゲームスタジオのロゴは平紙さんが作られたんですか?
平紙 はい。アートディレクターの松井さんと一緒に作りました。
          あのロゴはどういったイメージでデザインされたんでしょうか?
平紙 北欧神話のヴァルハラっていう場所は、荒くれバイキングの憧れの聖地なんですよ! 荒波を越えて大暴れするバイキングって感じです。
板垣 僕たちの想いを汲んで、松井と彼とで作ったという感じでね、すごい気に入ってます。

クール&エモーショナル

          板垣さんとのお仕事について聞かせて頂けますか? まずは原川さんからお願いします。
原川 板垣さんとの仕事で印象的だったのは、NINJA GAIDEN 2の時ですね。僕は主に敵キャラのデザインを担当していまして。
板垣 骸骨魔人(※1)とかね。
※1   骸骨魔人とは、NINJA GAIDEN 2の巨大骸骨ボスキャラ。腕を振り回したり頭を壁にぶつけたりと傍若無人に暴れまわる。正式名称は「魔神ゴグマゴグ」
原川 そうです。あれが僕の中で板垣さんの印象がガラッと変わった仕事だったんです。
          どのように変わったのでしょうか?
原川 最初に板垣さんがボスキャラのアクションイメージを文章に起こして、それを社内サイトに載せてスタッフ間でイメージを共有するという事をやったんです。その文章に挿絵をつけて欲しいと板垣さんから頼まれまして。
          そのイメージを表現する挿絵を描くということですね。
原川 そうです。で、その板垣さんの描写がめちゃくちゃ面白いんですよ。今でも忘れられないんですけど、ゲーム中で骸骨魔人がハヤブサを口にくわえて、壁に頭を何度も打ち付けるんですけどね。それが仕様書になんて説明してあるかというと「取り返しのつかない事をした体育会系の主人公が、壁にガンガン頭をぶつけて後悔する感じ」とか(笑)
一同 (笑)
原川 「ガラの悪い酔っ払いがドスを利かす感じで、もったいつけて、あたりをねめ回す」とか(笑)
板垣 そんなこと書いたっけ?(笑)
原川 そうですよ、とぼけないでください(笑)。「骸骨魔人は暴れて気が済むと、ふと我に返り、空を見上げたりする。その様はタチの悪い酔っ払いに同じ」とか書いてたじゃないですか(笑)
一同 (大笑)
原川 ユーモアがありつつ、すごくイメージが伝わりやすい文章で、「早く次の文章を読んで新しい挿絵を描きたい!」という気持ちにさせられました。
          とても楽しそうですね。
原川 僕がうまくイメージを掴みきれない時には、板垣さんが僕の席の後ろまで来て、「酔っ払いがドスをきかせて、もったいつけて歩き回るってのはこんな感じだよ」とか実演してくれるんですよ。
板垣 はいはい、間違いありませんよ。確かに、私がやりましたよ(笑)
          板垣さん自らですか!?
原川 はい。それまでは板垣さんってクールな印象があったんですが、実はとてもエモーショナルな人なんだと思って。すごく本気で楽しいものを作ろうとしているんです。そして作っている過程自体にもエンターテイメント性があるんですよね。
板垣 あれは面白かったよね(笑)。あの仕様書を読ませて何人のスタッフを吹き出させられるかってプロデューサーの岡本と賭けてたんだよ。でも岡本に「僕が賭けに負けてもいいですから、早く仕様書あげてください!」って言われてね(笑)
一同 (大笑)
板垣 僕は納得するまで脱稿しないからね。
          その仕様書が出来上がるまで公開しないんですね。
板垣 いや、仕様書自体はもうできてるんだよ。さらに具体的なイメージの詳細を書くわけ。みんなそれを見て動きを作ったりするからさ。
原川 挿絵を描きながら「本当にこれ実現できるのかな?」と思うものが大半だったんですけど、最終的にはほとんど実現しましたよね。
          すごいですね。
原川 そうそう、思い出しました。デスメガロフライヤー(※2)も凄かった(笑)。顔面波動砲のフェイシャルアニメーション(※3)を付けたんですよ。でも、実際のゲーム中だと波動砲を避けるから全然見てもらえないんですよ(笑)
※2   デスメガロフライヤーとは、NINJA GAIDEN 2の巨大人面魚型ボスキャラ。顔面から波動砲を発射する。プレイヤー泣かせの強敵。こんなふざけた英語はないと、スタッフの一部から猛烈な反対があったが、ある男の強い意志により、正式名称もデスメガロフライヤーのままとなった。
※3   フェイシャルアニメーションとは、顔全体の表情を動かすアニメーションのこと。
板垣 意味ないじゃん(笑)
一同 (笑)
原川 「ムンクの叫びのような顔から、クリムゾンキングの宮殿のジャケットのようなどうしようもない表情に変わっていく」って仕様書には書いてあったんですけどね。
板垣 それを書いたのは僕じゃなくて松井だね。
原川 たぶん、あの書き方だと僕しか理解できなかったと思います(笑)
          松井さんとはツーカーなんですね。
板垣 原川は松井のディレクションでコンセプトアートを描くわけ。で、一応コンセプトアートを描く前に「こういう敵なんだ」というのは、一応考えてるみたいなんだけど、僕はそれを全然気にしないの。出来上がった絵を見て、バーッと新しい遊びが頭に浮かぶんだよね。
          コンセプトアートからまた遊びが生まれると。
板垣 だけど「これをこういう風にしたら面白いじゃん」というところを伝えるとなると、元のアイデアを無視してることになるから、そこにはやっぱり笑いが無いと。「何、勝手な事言ってるんだよこの人は」という話になっちゃう(笑)。要するにゲームをどんどん面白くするためには、職場に「笑い」が必要だということですよ。
原川 すでにロケットランチャーを持っている敵に、さらに「9連装のミサイルポッドを持たせたい」という風にどんどんエスカレートしていったりしましたね(笑)
板垣 そうそう、素材活かしでどんどん面白くしていっちゃう。でもあれはやりすぎだったかもな。敵配置が悪かった。
          柔軟に変更していくんですね。
原川 あと、板垣さんのディレクションですごく印象的だったのは「超ハイスピード」ということですね。
          ものすごく速いんですか?
原川 僕の席に来て、言葉数少なく時間をかけずに本質をついたディレクションをして、あっという間に去っていくんです。
板垣 お前の席ではそうかもしれないけど、それを全員のところでやってるんだよ(笑)
一同 (笑)
板垣 でもこれはお世辞じゃなくて、原川のところが一番時間を使わなくて済んだかな。僕が言った事を深く考えてくれるから。
          なるほど。
板垣 そう。だから、それでも伝わりきらないところは実演するしかないよね。「酔っ払いがドスをきかせて練り歩く」感じにしても、「はたと我に返ったり」するにしてもね。そのへんですよ。
          みずからそれを動きで表現して伝えるわけですね?
板垣 それが一番手っ取り早いから(笑)。でもさ、骸骨魔人には本当に思い入れがあったから。だからあのモーション、結局、僕が酒飲んでモーションキャプチャーしたんだよね。だからエンディングのクレジットにモーションアクターとして、ちゃんと僕の名前が書いてある(笑)
一同 (大笑)

ボディランゲージ

          藤木さんは板垣さんとの出会いはどのような感じでしたか? 以前はバーチャファイターの開発にも携わっていたともお聞きしましたが。
藤木 こちらに来る前はセガのAM2研に行ってまして、アーケード版のバーチャファイター5のほぼ立ち上げ時から参加させて頂いてました。自分が最初のデザイナーですね。
板垣 ヴァルハラゲームスタジオに来てもらう前に一緒に飲む機会があってね。僕は彼が女性キャラ担当だと聞いていたんだけど、飲みながら話をしていてどうにも話が合わないんだよ。「今回、サラが本当に綺麗だよね」という話をするんだけど、彼は「そうですねー」としか言わないの。
一同 (笑)
板垣 ずいぶん思い入れの無い人だなと思ったんだけど、よくよく聞いたら男性キャラを作ってたという話でさ(笑)
          勘違いしていたんですね(笑)
板垣 で、バーチャファイター5の男性キャラは格好いいしさ、それなら一緒に仕事しようよという話になったんだよね。
          そういう出会いの形だったんですね。
板垣 それでさ、その飲みの時に彼が僕にタックルしてきてね。
          お店でタックルされたんですか?
板垣 いや、路上。
一同 (笑)
板垣 路上でタックルしてきてさ、僕も酔っぱらってるからドーンとぶっ倒れてね。で、後から聞いたらタックルじゃなくて、あれは...感情表現なんだって?
藤木 ボディランゲージです。
一同 (笑)
          そのボディランゲージで伝えたかった言葉は何なのですか?
藤木 お店を出たところで板垣さんが他の人と「頑張ろうぜ!」みたいな感じで抱き合ってたんですよ。それを見て僕も「よろしくお願いします!」みたいな感じで後ろから近づいていきまして、そしたら板垣さんがドーンと倒れられて。
板垣 お前、あれ走ってきただろう!(笑)
藤木 それくらい気持ちが高ぶってまして。
一同 (笑)
          それくらい想いが有り余ってたということですね(笑)。板垣さんの第一印象はいかがでしたか?
藤木 ヴァルハラゲームスタジオに来る前に抱いていた以上にカリスマ性を感じましたね。それと同時にとてもアットホームな感じで「あぁ、こういうのも悪くないなぁ」と思いまして。板垣さんが個性豊かなメンバーをまとめ上げ、慕われるわけが分かったような気がしました。
          ありがとうございます。片倉さんは板垣さんとはどのくらいでしょうか?
片倉 私は板垣さんと仕事をさせて頂くのは、この会社に入ってからになりますね。
          それまでは何をされていたのですか?
片倉 兼松(現ヴァルハラゲームスタジオCEO)の下で、アルゴスの戦士(※4)を作ったりしていまして、敵キャラのデザインおよびモデリングをやっておりました。
※4   アルゴスの戦士とは、業務用ゲーム「アルゴスの戦士」(1986年)を、PlayStation2専用ソフトとして生まれ変わらせた作品。弊社CEO兼松の監督により構築された美しく壮大な世界観と、モスクワ、ロンドンのアビーロードスタジオにて収録したフルオーケストラサウンドが話題を呼んだ。(開発・販売 テクモ株式会社)
板垣 彼はモンスターを描かせたら天下一品ですよ。
原川 そうなんですよ。僕がこの仕事を始めて、最初にビビっときたのがアルゴスの戦士の片倉さんの絵なんです。これは最終的にはゲームには出てないんですけど、ギリシャ神話のモンスターで「ヒュドラ」というのがいまして、これは9つの頭を持つ蛇なんですね。
          どのような絵なんでしょうか?
原川 普通はヒュドラを描こうとすると、1匹の蛇の胴体から枝分かれした9つの頭が出ているものを大概の人は想像しますよね。片倉さんの絵は違うんです。毛むくじゃらの野獣の大きな頭の口から、もう1個やや小さな野獣の頭が出てるんですよ。で、そのまた口からさらに小さい頭が出ていて、それが9個つながって1匹の蛇になっているんですよ。でも、キーワードだけ取りだすとこれでも正しいですよね。
          確かにそうですね。
原川 こういう、とんちの利かせ方をできる人と一緒に仕事ができたら楽しいんだろうな、と新人ながらにシンパシーを抱きましたね。
片倉 恐縮です。
原川 アルゴスの戦士の設定資料集に載っているので、持っている方はぜひ見て下さい。本当にすごいですよ。
板垣 なんだか、片倉の代わりに原川が全部説明しているみたいだな(笑)
一同 (笑)
          ところで聞いたところによると、片倉さんは常に雑誌等でグラビアを研究されてるという噂ですが。
片倉 いえいえ、そんなめっそうもない。
一同 (笑)
平紙 片倉さん、よく仕事中に僕の席まで来てグラビアだけ見て「いいねぇ~」と言って帰っていくんですよ。
板垣 それは、お前が仕事中にヤンジャン(※5)ばかり読んでるからじゃないか(笑)。片倉はそれを見てるだけだろ。
※5   ヤンジャンとは、集英社が発行する日本の青年向け週刊マンガ雑誌「週刊ヤングジャンプ」の略称。マンガだけではなくアイドルグラビアにも大きく力を入れており、表紙や巻頭をグラビアが飾っている。
片倉 でも、実はそういう時間がちゃんと仕事に活かされてるんですよ。キャラクターのデザインやモデリングなんかで。
原川 それは本当です。
          仕事に反映されているのですね。
板垣 ところで知ってる? グラビアっていうのは「グラビア印刷」の事なんだよ。
          そうなんですか!?
板垣 そうだよ。写真を本に印刷するときの技術の一つとしてグラビア印刷というものがあって、それでかわいい女の子の写真をたくさん載せるようになったから、転じてそういう女の子のピンナップやポートレートを「グラビア」と言うようになったんだよね。
          印刷技法のひとつだったんですね。知りませんでした。勉強になります。
板垣 うんちくを語りたいわけじゃないよ。ちゃんと正確な言葉で話をしておかないと、英語に翻訳する人が大変だからさ。

仲人

          そういえば平紙さん、最近御結婚されたと伺いましたが?
平紙 はい。最近結婚をしました。板垣さんに仲人をして頂きまして。
          え? 本当ですか?
板垣 ある時、僕と平紙で飲んでたんだよね。それで「どうやってプロポーズしたらいいでしょうか...」と言うからさ、「いま電話すればいいじゃん」ってその場で電話してもらったんだよ。
          飲んでいるその場で!?
板垣 そう。でも電話したら彼女は出なかったんだよね。だってあれは夜中の...
平紙 2時ですね。
原川 そりゃ出ないでしょ(笑)
板垣 それで留守電にプロポーズの言葉を入れたの。
          留守電にプロポーズの言葉ですか!?
平紙 ただ、僕は20~30秒しか話してないんですけど、板垣さんが5分くらい話してました。
一同 (大笑)
板垣 平紙がいかに良い男であるかを、わざわざ俺が説明したんじゃないか(笑)。あの時はね、「いずれは結婚するつもりだ」と平紙が言うから、そんなこと言ってないで早くしたほうがいいよってね。平紙の話を聞くと、相手はプロポーズの言葉を待ってるように感じたし。
平紙 でも留守電でプロポーズする奴、いないですよ。
板垣 そうか? 奥さん、留守電永久に取っておくって喜んでたじゃない?
平紙 ああ、でもあれ、AU(※6)の電話の機能で、自動的に1週間で削除されてしまったそうです。あれ、爆笑モノだったのに(笑)
※6   AUとは、日本の大手電気通信会社であるKDDIが提供する携帯電話サービスのブランド名。日本国内の携帯電話市場における占有率は第2位(2010/3現在)。
板垣 マジかよ!!
一同 (笑)
板垣 まぁ、とにかくそんな感じでお二人の間を取り持つような格好になったから、せっかくだから俺が仲人をやるぜ、とね。
          形式だけでなく、本当の意味での仲人ということですね。
平紙 そうなります。
板垣 いずれは結婚するつもりだったんだろうけど、早くしたほうがいいよって事でね。子育ての事を考えたりするとね。
          なるほど。普段から板垣さんとはこのようにフランクな関係なのでしょうか?
平紙 そうですね。いつもよく麻雀などで遊んで頂いています。
          麻雀ですか。ヴァルハラゲームスタジオさんではよく出てくるワードですよね。
一同 (笑)
板垣 平紙は、だいぶ強くなってきたよね。
平紙 ありがとうございます。以前からルールは知っていたんですけど、ちゃんと卓を囲んだのはこの会社に入ってからが初めてで。それからずっと勉強させて頂いてます。
板垣 彼は飲み込みが良くてね。器用なんだよ。
          良い事ですね。
板垣 器用だから仕事が早い。早いんだけど仕事を終わらせるといつもヤンジャンを読んでる。
一同 (笑)
平紙 すみません(笑)。確かに他の人からするといつも遊んでるように見えるかもしれません。
板垣 だから誤解されるんだよ。僕はこれまで何百人と見てきたけど、できる人ほど誤解されやすいね。
          なるほど。...ところでずっと気になっていたのですが、今日のファッションには何かこだわりがあるのでしょうか?
一同 (笑)
平紙 いえ、これは普通の私服です。そろそろ暖かくなってきたので胸元を開けてもいいかなと。
          「春だし、こんなやつがいてもいいかな」的な?
平紙 それどういう意味ですか!?
一同 (笑)

強烈な独自性

          皆さんは普段どのように仕事に取り組んでいらっしゃるのでしょうか? まずは藤木さん、いかがですか?
藤木 僕はこれまで主にキャラクターのコンセプトアートを3D化するという仕事をしてきまして。自分で何かを表現したいというより、他人の表現したいことを僕が3Dで表現する、そしてその表現を周囲の期待以上のものにするというのが、僕にとってある意味生きがいなんですね。
          皆のためになる事が自分の喜びだと。
藤木 はい。それで一緒に仕事をした方々からは好評を得てきましたし、自分でも成果を残せたと思っています。でも、このヴァルハラゲームスタジオでは、それに加えて「自分で何かを表現する」という部分がより求められると感じています。
板垣 そういう人ばかりが集まっているからね。
          平紙さんはどうですか?
平紙 今はエフェクトアートに限らず色々とやらせて頂いてますけど、そのおかげで新しいものを勉強する機会、チャレンジする機会が増えているので非常に楽しいですね。板垣さんがそういうチャンスをどんどん与えて下さるのでやりがいがあります。
          いいですね。片倉さんはいかがでしょうか?
片倉 そうですね...うーん...
          例えば、普段からキャラクター作りで心掛けられている事などはありますか?
板垣 それ、僕も聞いてみたいね。
片倉 えー、そうですね...まず、机の上に置いてあるプラモデルやフィギュアとかそういう物の造形的な魅力を感じ取りながら、モチベーションを高めて行くんですね...それからですね...何を考えてるかと言いますと...うーん...
          ...つまりは特に何も考えていないと受け取ってよろしいのでしょうか?
一同 (笑)
板垣 ちょっと助け舟を出すとね、片倉は、こういう場所でしゃべるのが仕事じゃないからね。藤木なんかも結構緊張してるし、うまく話すのは大変だと思うよ。ただ、いまの片倉の話には「つまりどういう事なんだよ!」と突っ込みたくはなる(笑)
片倉 でも、実は本当にあえて「何も考えないようにしている」のはありますね。あまり考えると「こだわり」が出てきてしまうんですよね。
板垣 ああ、なるほどね。
          こだわり、ですか?
片倉 独自性が出てしまうと良くない面もあるので、なるべく無心で描くようにしているというのはあります。
          独自性というものはあった方が良いように思うのですが、それは違うのですか?
板垣 いや、彼は独自性が強すぎるから引き算をしないと、なかなか一般に受け入れられない、ということを言いたいんだと思いますよ。
片倉 どうしても出てしまうんですよね。
原川 僕もキャラクターのデザインをしていて一番難しいなと思うのは、自分では「うまくアイデアがまとまって良く描けた」と思う絵が評判が悪かったりする事が多々あるんですよ。逆に「締め切りまであと5分あるから、ササッともう1枚描いておくか」というものが意外と受けが良かったり。この仕事を長年やっていますけれど、なかなかコントロールできない部分ですね。
          「無心」というのも一つの重要な要素になってくるわけですね。
片倉 そうですね。例えば先ほど話に出たヒュドラの絵ですが、こだわりが入り過ぎてしまった例なんですよね。ですから、最終的に採用はされなかったのだと思います。
板垣 背景アーティストとの対談でも言ったけど、情熱を持たない人に情熱を植え付けるほど難しい事はないよね。独自性を持たない人に独自性を打ち出せというのは、これと同じくらい難しい事なんだよね。強すぎる個性から、何を引くかとか、あるいはディレクション的な言い方で言えば「丸め方」とか、そういうのはいくらでもHow toがある。
          なるほど。
板垣 そういう意味で言ったら、ここには独自性というか、とにかく濃い奴らばかりが集まってますね。
          個性の塊のような方ばかりが集まってるのですね。
板垣 もう大変ですよ(笑)。彼らは口ではおとなしい事を言ってるけどね、絵を描かせたらもう大変なんだから。
原川 この場で絵をお見せできればいいんですけど。
板垣 そこは今後のお楽しみということで。
          見られる日を楽しみにしております。

相対的ではなく絶対的であること

          それでは、これから一緒に働く方へのメッセージをお願いします。
原川 このヴァルハラゲームスタジオの特徴として、各セクションの連携のしやすさや風通しの良さについては、すでに他の方も語られていますが、キャラクターアーティストからすると「道具の良さ」というものも大きいんですよ。
          道具ですか?
原川 ええ、照明の色温度にまで拘る板垣さんには、驚かされました。PC、モニター、アプリケーションどれを取っても現状最高峰のものを揃えてますし、開発フロアの照明についてもこだわっていますね。つまり、アーティストが自分の創造力を思う存分発揮して形にできる環境だという事です。
          照明については以前の対談でもお話に出ましたね。
原川 この環境を使って思いっきり暴れられる人にぜひ来て欲しいですね。臆せずに「こんな面白い事思いついちゃったんですけど」とガンガン提案して欲しいです。
          そういう方が増えてくると原川さん大変なんじゃないですか?
原川 すでにクセ者揃いなので変わらないです(笑)
一同 (笑)
          板垣さんもクセ者が多いと大変ではないですか?
板垣 いやいや、そういう人の方が面白いでしょ。やっぱり面白い人が面白いものを作るんで、人として面白がりどころのある人がいいですよね。
          アーティストとしての技術よりも、まず面白さという事ですか?
原川 まず人間として面白い人がいいですね。仕事仕事した話からあまり面白いものは生まれないと思いますし、バカ話しながらでもみんなでアイデアを練っていきたいですね。
板垣 そうだね。そういうところから生まれる事がいっぱいあるよね。
片倉 ここにいる人は一人ひとりのスキル、仕事に対するモチベーションがとても高いです。これこそがやりがいのある仕事なのだなと実感していますね。そう思えるのも、やはり、本当に良くしてくれる仲間がいるからですよね。
          エフェクトアーティストについてはどうですか?
平紙 自分で切磋琢磨できる人がいいですね。スキルだけでなく情熱も持っていて、互いにアイデアをどんどん出し合える関係になれたら嬉しいです。願わくば自分よりももっとスキルを持っている人に来てもらって、僕自身が挑戦者になってより高い位置を目指せたらと思いますね。
          互いに高め合っていくのですね。
平紙 そうですね。単純に言われた事をやるだけだと全然面白味が無くなってしまいます。エフェクトというのは他のセクションで作られたものにケレン味を追加して派手にしたりする部分ですので、やりすぎなくらいのエフェクトを先に提案していける方が望ましいです。先ほど板垣さんが言われていた情熱と同じことで、「こんなに派手なのを考えてきちゃったんだ」というところから減らしていく方が良いものができますね。
          なるほど。良く分かりました。
平紙 ですから「はじけた人」がいいですね。スキル的にも人間的にも。
          ファッション的にもですか?
一同 (笑)
平紙 ファッションは普通で大丈夫です(笑)
          みなさん本当に全てにおいて個性的な方ばかりですね(笑)。それでは、最後に板垣さんから一言お願いします。
板垣 僕は、情熱というのは持っていて当然だと思っているんだよね。だけどいつしか人はそれを捨ててしまう。
          捨ててしまうと。
板垣 子供の頃に絵を描くのが嫌いだったという人はあんまりいないと思う。だけど小学校に上がる頃には、絵を描いても親しか褒めてくれなくなったり。上手い子ばかりがみんなから誉められて、自分はといえば、他人から「下手くそ」とか言われたりするじゃない。そうすると、もうこれ以上そんな風に言われたくないとか、あるいは自分の格好悪いところを見せたくないとか、そういうところで絵というものを、自分からどんどん遠ざけていくんだよね。これは何事でもそうじゃない。スポーツでも何でもね。
          なるほど。
板垣 子供のころは走るのが好きでも、例えば、徒競走で1番2番3番ビリと順位がついてくるようになるとさ、全力で走ってビリになるくらいなら、斜に構えてゆっくり走ったりするじゃない。「わざとビリになったし」みたいな事を言ってみたりね。
          ありがちな事ですね。
板垣 自分がどれだけの高みに行けるのか、自分で分かってなくてもいいんですよ。斜に構えずに「俺は絶対にこの道で一番になるんだ」という事に対して真摯に立ち向かっていくこと、それを僕は「情熱」と呼びたいね。
          なるほど。
板垣 僕が「相対的ではなく絶対的であれ」と言っているのは、自分をそれぐらい信じろという事。そういう人に集まってきて欲しいね。世の中には、いっぱいいるはずだから。
          絶対的に自分を見れる人ということですね。
板垣 会社の上司がよく言うセリフに、「自分で自分を評価するな。お前を評価するのは俺だ」というのがある。だけど、だまされちゃいけないよ。あれは人が人を飼い馴らすためのレトリックだから。自分が自分を信じれなくてどうするの。上を見てがっかりしても仕方ないし、下を見て優越感に浸っても意味がない。自分を「As is」で見れてさ、高いところを目指して頑張れる人だったら何でもできるんじゃないかな。
          みなさんを見ていると、そういう魂をしっかり持った人たちなんだと強く感じますね。今日はどうもありがとうございました。
一同 ありがとうございました。



写真: (C)板垣プロダクション  撮影: Ryuga Shinno.