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プログラマー対談

2010.03.01

社員とのコミュニケーション

          板垣さんとのプログラマーとの対談という形でこのような場を設けさせて頂きました。
板垣さん、このような事は結構されてらっしゃるんですか?
板垣 こういうのって、社員とこうやって・・・
          はい。社員と対談するみたいなものは・・・
板垣 社員と対談? 毎日してるよ(笑) 当たり前ですよ。
一同 (笑)
          では開発の皆さんとのコミュニケーションというのは毎日のように?
板垣 別に別室にこもって仕事しているわけじゃないし、同じフロアでやっているから。
          そうなんですね。みなさんいつも密にしゃべられて開発を進めてらっしゃると。
板垣 そうだね。仕事の話しかしないようじゃ、やっぱり仕事にならないからね。むしろ仕事以外の話の方が、大事だと思うよね。
          仕事以外の話ですか。
板垣 そう、趣味とかさ。そういうところの共通点が無いと絶対仲良くなれないし、仲良くないとこんな仕事は全然できないもんな。そういうコミュニケーションがなければ仕事できないじゃない。
          なるほど。素晴らしいです。
それでは、お一人ずつ自己紹介をお願いします。
佐々木 佐々木と言います。プログラマー全体を統括していて、グラフィック周りでシェーダー(※1)を書いたりしています。

リードプログラマー 佐々木 卓郎

代表作品:
・NINJA GAIDEN 2 (Xbox 360 / 2008) リードプログラマー
・DEAD OR ALIVE Xtreme 2 (Xbox 360 / 2006) グラフィックプログラマー
・DEAD OR ALIVE 4 (Xbox 360 / 2005) グラフィックプログラマー
・NINJA GAIDEN Black (Xbox / 2005) グラフィックプログラマー
・DEAD OR ALIVE Ultimate (Xbox / 2004) グラフィックプログラマー
・NINJA GAIDEN (Xbox / 2004) グラフィックプログラマー
・DEAD OR ALIVE 3 (Xbox / 2002) グラフィックプログラマー
・DEAD OR ALIVE 2:Hardcore (PS2 / 2000) グラフィックプログラマー
・DEAD OR ALIVE 2 (PS2 / 2000) グラフィックプログラマー
(以上全て テクモ株式会社 開発・販売)

※1   シェーダーとは、3Dグラフィックの描画処理を行うプログラムのこと。これによって美麗な映像表現が可能になる。
前田 前田です。プログラマーです。何をやっているかと言うと・・・何だろうね?

リードプログラマー 前田 泰志

代表作品:
・ NINJA GAIDEN 2 (Xbox 360 / 2008) リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE Xtreme 2 (Xbox 360 / 2006) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE 4 (Xbox 360 / 2005)リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE Ultimate (Xbox / 2004) リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE Xtreme (Xbox / 2003) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE 3 (Xbox / 2002) リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE 2:Hardcore (PS2 / 2000) リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE 2 (PS2 / 2000) リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE (Saturn / 1998) リードプログラマー
・ DEAD OR ALIVE (業務用 / 1996) リードプログラマー
・ 闘姫伝承 ANGEL EYES (業務用 / 1996) リードプログラマー
・ Tecmo Super Bowl (MD / 1993) プログラマー
・ Final Star Force (業務用 / 1992) リードプログラマー
(以上全て テクモ株式会社 開発・販売)

板垣 あれじゃないの。指名打者。
          指名打者なんですか!?
前田 今はネットワーク周りをやってます。あとは、うーん・・・基本的に・・・ご意見番的な?
          「あぶさん」みたいなものですか?
一同 (笑)
板垣 だから指名打者(笑)
          なるほど(笑) では次の方お願いします。
小菅 小菅です。昔は手広くあちこちつまんでいましたが、だんだん作業量が増えてきて、ひとつのモジュールを作るのも大変になってきたので担当範囲は狭くなってきています。今は内部系と言いますか、表に出ない部分が多いですね。

プログラマー 小菅 一弘

代表作品:
・ NINJA GAIDEN 2 (Xbox 360 / 2008) プログラマー
・ NINJA GAIDEN Σ (PS3 / 2007) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE Xtreme 2 (Xbox 360 / 2006) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE 4 (Xbox 360 / 2005)プログラマー
・ NINJA GAIDEN (Xbox / 2004) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE 3 (Xbox / 2002) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE 2:Hardcore (PS2 / 2000) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE 2 (PS2 / 2000) プログラマー
・ DEAD OR ALIVE (PS / 1998) プログラマー
(以上全て テクモ株式会社 開発・販売)

          内部系と言いますと?
板垣 ゲームのプログラムって、絵と音を出すというのが表に出る部分。それに対して、「こういう入力があったらこう動く」とか、中身の部分があるじゃないですか。それが小菅の言う「内部系」ということですよ。
          なるほど。今はその部分を主に担当されていると。
小菅 そうですね。

ゲーム内部のスペシャリスト

板垣 内部をやるプログラマーの方が大変なんだよ。本当にベテランじゃないとできないからね。映像だったら出力がおかしくなっていればすぐ分かるけど、内部だと「感染しているのに発症していない」ようなもので、そのままバグが残っちゃうとかさ。だよね?
前田 うんうん。
          緻密なプログラミングが求められるんですね。
板垣 まったくもってそう。あとOSなんかはもっとヤバいですよ。
          さらに土台の部分ですよね?
板垣 前田とか僕はずっとOS書いてきたし。
前田 というか、OS書かないといけないハードからやってるから。
          ええっ!?そうなんですか? と言うと、みなさんゲームの開発経験はどれくらいになるんでしょうか?
板垣 プロになってから? アマから話してもいいですか?(笑)
          ぜひぜひ(笑)
板垣 アマチュア時代で言ったら、中学2年生からやってるかな。
          どんなゲームを作られていたんですか?
板垣 中学の頃は、ガンダムのゲームだったかな。大学生の頃には湾岸戦争のシューティングゲームを作ってたな。Dynabookで作ったんだけどね。
・・・あ、ごめんごめん。今日は俺の話がメインじゃなかったよ(笑)
一同 (笑)
          前田さんはどれくらいになるんでしょうか?
特に板垣さんとご一緒に仕事をされている期間などは?
前田 25歳くらいから一緒にやり始めて18年くらいかな。
板垣 前田は僕が入社したときの1つ先輩で彼が68系のCPUをずっとやってて、僕が65系。68系というのはモトローラの68000とかね。65系というのは、ファミコンの6502とか スーパーファミコンの65816とかさ。そういうのを65系って言うんですよ。
          チップの名前ですか?
板垣 CPUの名前ね。彼はずっとゲームセンター用のゲームをやっていて、僕は家庭用をやっていて。DEAD OR ALIVE(※2)はゲームセンター用のものだったので、そのとき初めて前田に来てもらってね。そこからずっと一緒にやっている感じだね。
※2   DEAD OR ALIVEとは、1996年公開のアーケード用対戦格闘ゲーム。その後家庭用ハードに移植され、続編等合わせて10作以上が作られる人気シリーズとなった。(開発・販売 テクモ株式会社)
          大変長いお付き合いなんですね。これまでで印象に残っている事はありますか? 一番苦労した事とか・・・
前田 あんまり苦労はしないタイプなんだけど、ネットワーク周りの不具合対策をずっと一人でやっていた時にハードウェアとテレビを何台も目の前に並べて・・・
板垣 前田の周りに8セット置いて、もう管制塔みたいな感じ。
前田 そして同時に接続した上で、不具合を無理矢理起こすと。
板垣 俺、隣で手伝ってたよね?「この瞬間にお前が押すんだ!」とか言われてね(笑)
          それは対戦のチェックとか?
板垣 そうそう。これもさっき言ったような「内部系」ということですよ。内部だからバグを見つけるのが大変。
前田 ネットワークの問題だから、タイミングの問題なんだよ。
          すると、一人で複数のコントローラーを足とかも使って・・・
前田 そうそう・・・でも、足は使ってないかな(笑)
板垣 僕がすごく誇りに思っているのは、彼が対戦格闘ゲームで初めてまともに動く8人同時参加の「仮想ゲームセンター」を、たった一人で作った張本人だという事なんですよ。
          それはハードはどの時代の事ですか?
前田 Xbox。
板垣 そして、未だにその技術が誰にも抜かれていないと。そういう人なんですよ。
          そうすると指名打者だけど、出てくると4番級の働きをすると。
前田 と言うか、誰もやった事のないところをやるので。
板垣 そういうこと。この人の右に出る人はそうはいないよ。いたら紹介して下さい(笑)

プログラマーとの信頼関係

          佐々木さんはどれくらい長くやってらっしゃるんでしょうか?
佐々木 私は11年やっています。最初はセガのアーケード基盤のNAOMI(※3)から始めて、PlayStation2、Xbox、Xbox 360という形で仕事をやっています。
※3   NAOMIとは、セガのアーケード用基板。アーケード用DEAD OR ALIVE 2はこれを使って制作された。
          今まで板垣さんと仕事をされてきて、どうしても言っておきたい事とかありますか?
佐々木 板垣さん、カメラがすごい大好きでして。
          佐々木さんもお好きなんですか?
佐々木 はい、大好きです。僕がカメラをすごく好きになったきっかけは、DEAD OR ALIVE 4で写真撮影モードを作ることになった事です。そこでカメラのF値や被写界深度とかそういったところでリアルに1枚の絵を作るというのをプログラムでやる事になって。
ちょうどその頃シェーダー全盛期に入ってくるタイミングで、これは自分にとって一番いい仕事を見つけた! という感触でした。それまでは色々と下積み系の仕事をしていたんですが、そこからはより楽しんでものを作れるようになった気がします。
          ご趣味のカメラと仕事で表現する部分が、だんだんシンクロするようになってきたと?
佐々木 でも、実はそれを作った後に一眼レフを買って「あっ、これはすごい!」と思って。
板垣 僕が出す指示が、現実のレンズを通したものが、どのように撮像されるかという光学的な事ばかりなので、彼はそれに付いて行こうと思ったんだよね。「前ボケはこんな風に映らないよ」とか「後ボケもう少し何とかならないの」と言うときに、どういうものにしたいのかというところを理解したかったからでしょう。
佐々木 それをDEAD OR ALIVE 4で理解した、という感じですね。
          なるほど。ありがとうございます。
では小菅さんは板垣さんとのお付き合いはどれくらいなのでしょう?
小菅 私も12年になると思うんですけど、最初の1年はDEAD OR ALIVEチームじゃなかったんですよ。最初に板垣さんを見たのは新人研修の時だったんですが、その時「なんて厳しい人なんだろう」と思ったのが第一印象です。
板垣 (笑)
小菅 この人のところでやっていけるんだろうかと当時は思いました。
          そしてその後は・・・
小菅 結局そのまま10年以上やっている訳ですけれども(笑) 最初に違うところに配属された後 いきなりDEAD OR ALIVEチームに編入になって、PlayStation版以降のDEAD OR ALIVEと、NINJA GAIDEN(※4)シリーズに関わっています。
※4   NINJA GAIDENとは、2004年にXbox用に発売されたアクションゲーム。DEAD OR ALIVEで培ったアクション性のノウハウを注ぎ込んだ傑作。その難易度にもかかわらず全世界に熱狂的なファンを生み出した。(開発・販売 テクモ株式会社)。
板垣 彼はすごいのよ。
          すごい?
板垣 プログラマーが全員倒れても最後まで立っていた男なんだよ(笑)
一同 (笑)
          すごいですね。 開発において一番大事にされていた事は何ですか?
小菅 やはり開発の最後の頃の頑張りですかね。板垣さんは・・・最近はそうでもないんですが・・・かつてはギリギリまで指示を持ってこられたので。最後の追い込みの作業をしている時に、「こんな面白いことを思いついちゃったんだけど」的な事を持ってこられたりして、えっ?今からやるの?みたいな(笑)
一同 (笑)
板垣 なんかリアル苦労話になってきたね(笑)
          そのような苦労にも関わらず、ここまで続けられているというのは何故でしょう?
小菅 それを入れたら確かに良くなるだろうと思ったし、そういうものを入れられるというのが、やはり大切なのかなと。
板垣 そうだよね。
          板垣さんは元々プログラマーをされていたとの事ですが、プログラマーへはどのような指示のされ方をしているんでしょうか?
板垣 一番大事なことなんだけど、僕は話す人によって、自分のデバイスドライバを全部入れ替えて接するから。前田と話すときは前田向けのデバイスドライバだし、あるいは他のセクションでもそう。人はみんな違うから。一番伝わりやすい言葉で話すのが僕のやり方。だから仕事以外のコミュニケーションが大事だということだよね。気持ちよく仕事してもらわないと、絶対いいものはできないので。
その代わり、確かにディレクションやオーダーは相当ハードルが高かったり、あるいはこの短期間でやるのかとかいっぱいあると思うんだけど、であればこそ気持ちよくやってもらわないとしょうがないじゃないですか。
          はい。
板垣 だからお互いを知って・・・例えば「もうすぐ結婚するんだよね」とか、そういう事も全部含めて。僕にとっては24時間仕事だから。人を知らなければ人に気持ちよく働いてもらえないし、また人を知らなければ人を感動させることなんて、できる訳がない。
          なるほど。そこに素晴らしい信頼関係が構築されているんですね。
板垣 じゃないとゲームは作れないよね。
佐々木 そうですね。

勝負師

          ・・・ところで唐突で申し訳ないのですが、今日は板垣さんサングラスをされていないようですが?
一同 (大笑)
          何か不思議に感じるんですけれども。
板垣 そう? 去年から「まぁいいかな」と思ってかけない時もあるんですよ。で、ほら、今日はこれ会社の中でしょう? 会社の中でサングラスかけてたら仕事できないでしょう。
          確かにそれはそうなんですけれども、以前は会社の中でもサングラスをされていたようなお話を聞いたことがあるんですが。
板垣 そうなの?
一同 (笑)
          よく雑誌のインタビュー記事などでサングラス姿を拝見しましたが・・・
板垣 ああ、あれはあれでしょ。今回は僕が主役じゃなくて、社内ではどんな風に仕事をしているのという話だから、社内での普通の格好をしていないとしょうがないなと思ってね。
          そういうことだったんですね。てっきりサングラス無しでは生きられないのかと・・・
板垣 そんな訳ないでしょう!(笑)
一同 (大笑)
          失礼しました(笑) では何故サングラスをかけてらっしゃるんですか?
板垣 僕はゲーム開発者になる前はプロのギャンブラーになろうと思っていたから。麻雀のね。その時に目線を読まれたら損するじゃない。だから外ではサングラスかけるんですよ。基本的に。
          基本的にですか?
板垣 そうそう。人がどこを見ているかというのは非常に重要な情報なんで。
          元々は麻雀のプロになろうとしたんですか?
板垣 そうですよ。で、麻雀プロで日本一になったらいくら稼げるかと思って調べたんだけど、思ったより安かったんだよね。まあアレは表の年収なんだろうけど(笑)。 あとは周りの全員から反対されたから。
          プロのギャンブラーになろうという部分で持っていた能力は、ゲーム作りに生かされているんですか?
板垣 みなさんに聞いてみたらどうでしょう?(笑)
          みなさんどう思われますか?
佐々木 ゲームを面白くするための判断の速さと潔さというのは、勝負師として凄くて、それがハズレがない、ハズした事がないというところで板垣さんの凄さを感じますね。
          具体的にはどんな?
佐々木 最後のゲームのレベル調整とか、そういったところの指示というのは的確ですね。だから結果としてゲームが面白くなるという事ですね。
          そこはギャンブルと通じるところがあるんですか?
板垣 ギャンブルというと、サイコロ任せの博打と勘違いする人が多いんだけど、そうじゃなくて、ある局面でサイコロを振ったらどのような結果が出るかを数学的に読むことを、僕はギャンブルと言ってるわけ。
          なるほど。
板垣 真髄は数学だから。数学的分析で期待値としてメリットとデメリットどちらが大きいかというところをパパッと計算できないと、麻雀にせよゲーム開発にせよ、財布がいくつあっても足りないですよ(笑)

新しい環境の魅力

          それでは、新しい環境であるヴァルハラゲームスタジオについて教えてください。
前田 以前の会社でチームを組んでから、変なセクショナリズムとか、個人的なエリアなどは排除して、なるべく横軸縦軸の糸を太くする環境を作ろうとしてきました。ただ、プロジェクトの規模がだんだん大きくなってくるとどうしようもない。ビルの一番向こうの端にいる人間の事なんて知らないわけじゃないですか。
          はい。
前田 で、一回新しい環境になって収まって人数も絞られて、今かなりいい感じで仕事ができてますね。
          小菅さんの方はいかがですか?
小菅 できたてほやほやの会社ですからね。歴史が長いことが良い場合と悪く働くときがありますよね。どうしても慣習とか制度などに縛られる面も出てきます。そういう意味で、これから文化を一から作る事ができるとてもいい時期だと思っています。
          佐々木さんはいかがですか?
佐々木 今までの開発では、1年1作の積み重ねでプログラムはできていたんですけれども、新しい会社になって一からものを色々作っていくというところで、プログラムが全部最先端のものになっているという感じで、今がすごく「旬」です。
前田 これからずっと「旬」の間違いでしょ(笑)
一同 (笑)

求めるプログラマー像

          現在プログラマの採用募集を行っていますが、みなさんが求めるプログラマー像というものを教て頂けますか?
前田 何かをやって欲しいという案件があるわけじゃないですか。その案件の解決法の全体像からまず考えて、それをキレイにまとめられる人。ただ、一回キレイにまとめた後で「ここ変更して」とか「こういう風にならない?」というのは、ゲームを作る時には必ずあります。
          必ずあるんですか?
前田 必ずあります。普通のプログラマの考え方としては1個のオブジェクトやクラスを作ったら「他は知らないよ」という作り方をするわけですが、「この場合はこうしてよ」というのに対処できなくなるので、「一旦キレイに作ったものを汚く書き直すことを厭わない」事ができる人がいいかな。
小菅 プログラマーに限らないでしょうけど、楽しく仕事ができる人というのが大切でしょうね。楽しいかどうかでできるものも違ってくるとは思いますし。あとは、答えは1つに決まっているものではなくて解決法はいくつもあるので、自分が正しいと思って作ったものが採用されなかったり形が変わってもやる気を失わない人ですね。
          そういう気持ちの部分が大切なんですね。
小菅 そうですね。情熱と言うんでしょうか。
          佐々木さんはいかがですか?
佐々木 私のモットーとしては「早くてうまい」です。プログラマーとして今までいっぱいゲームを作ってきたんですが、1年に1本のサイクルでゲームを作るというのは実はすごく大変です。
それだけ早くコードを組まなければいけないんですが、その時のスピード感というものはすごく大事です。いい成果をあげられる正しく動くコードを、むしろそういったスピード感あふれる開発で達成することを楽しんで仕事をできる人を期待したいですね。
          それはプログラマーさんをまとめてらっしゃる立場として重要視されている点ですか?
佐々木 そうですね。

ゲームとビジネス

          それでは最後に板垣さんからもお願いします。
板垣 今3人とも違うことを言って、どれも本当に大事な事だね。前田が言っていたのはモジュールとしての器の大きさだよね。どこに爆弾を命中させるのかを決めるのは最後だから。センチ単位の最終誘導は着弾直前にやるんですよ。絞るのは最後です。そこまでは柔軟に構えてどんなものでも対応可能なフレキシブルなプログラムじゃないといけないということだね。
          フレキシブルさが重要なんですね。
板垣 よくゲーム業界とかエンターテイメントに詳しくないプログラマーや技術者の方が、勘違いしていることがあるんだけど。例えば開発の流れを大まかに言えば、「仕様を作りました、フローチャートを作りました、コーディングしました、タイピングしました、テストに回しました、デバッグしました、コードの承認降りました、はい発売」という工程があるじゃないですか。
          はい。
板垣 その前の工程にさかのぼりする事を絶対に許さないソフトウェア業界もあるんですよ。僕はプロとしてソフトウェア開発に携わることを決めたとき、ゲームとは真反対側のプログラムの作り方を勉強したんだよね。ある意味「逆を知る」ということでね。でもねゲームというのは全然違うんだよ。面白くなかったら、一番最初の仕様に平気で戻ったりしますからね。
          工程の中でも戻ったりすると?
板垣 戻りますよ。そっちの方が面白いんだったら。で、まだ間に合うんだったら。
          そこは戻る部分のリスクをかえりみて・・・
板垣 リスクが無いと判断したから戻るんです。
          なるほど。
板垣 これに対して事務系ソフト、スプレッドシートとかワードプロセッサなどというのは、基本的には戻らないです。「こっちの方がいい」という発想が生まれたとするじゃないですか。それを上司のところに持って行ったら、呆れられますからね。
          そうなんですか。
板垣 例えば何某というワードプロセッサの7があって、その開発中に「こっちの方が絶対売れますよ!」となっても、「それはいいアイデアだ。だが、この仕事が分かってないな。そういうネタは、次の8まで取っておくんだよ!」というのが当時のビジネスソフト側のソフト開発。これは90年代の日本で本当にあった話だよ。それに対して、ゲームというのは、その時あるアイデア・面白さというものを全部詰め込むというところがあるんだよね。これはもうゲームデザイナー側もそういう考えですからね。
          それではゲームデザイナーの方々もフレキシブルに動かれると?
板垣 そうですね。このあと、ゲームデザイナー陣との対談もありますけれど、彼らにも聞いてみてください。
          分かりました。
板垣 それから、小菅が言っていたのはすごく当たり前の話で、当たり前だけどそれがそうできない というゲーム業界になってきてしまっているというのがあって。ここ日本では。
          慣習や制度などのお話ですか。
板垣 だから、それに流されずいいものを作ろうという実力者たちが集まったんですよ。佐々木が先ほど言った内容にも絡みますけれども、ここにいる人達はね、平均すれば1年に1本、100万本のソフトを出すことをずっとやってきた人達なんです。
          それを義務づけられてきたという事なんですか?
板垣 義務なんてないですよ。それが仕事だった。
          それは大変な事なんですか?
板垣 それができる人がいたら、僕、給料たくさん払いますけど。
一同 (笑)
板垣 これは経済の話だけど、僕は基本的にメディアに出るときに、経済とかビジネスの話は一切しないというポリシーで今までやってきたのね。なぜならゲーム誌とかに商売の話ばっかり載っていてさ、ゲームを遊ぶ人たちがもっと知りたいのは、ゲームがどう面白いのとか、あるいは開発者は何考えてこれを作ったのだとか、そういう事なんじゃないの?という話で。
だから自分は、あくまでもゲームデザイナーとして、一切ビジネスの話はしないということでずっとやってきたんですよ。
          なるほど。
板垣 ただ今日は、経営者として話しているわけだから経済の話をしましょう。なんで1年に1本ということになるかと言うと、それは単純な話ですよ。会社の決算というものが1年に1度やってくるからなんですよ。
          上場されている会社の決算というものが・・・
板垣 そう。株を公開している企業というものは、そこで何らかの配当を出さなければいけないという大命題があるので仕方ないですよ。ただね、僕らゲームを作っている人の思いとしては、先ほど言ったように、まず当然自分たちが楽しく。
          確かに。
板垣 お客さんに楽しんでもらわないといけないね。それから、ゲームが売れ残ったりするとゲームを取り扱ってくれる小売りさんとか、流通とか、あるいはメディアに迷惑をかけるでしょ。この「開発者・お客さん・ゲーム取扱関係者」の3者が、全部ハッピーにならなければならない。それが究極の答えだから。「3者の満足」。それがこの会社のコンセプトなんです。
          なるほど。
板垣 なかなかできないんだよ、これって。僕も今までみんなハッピーだって言ってくれたのは、たぶん、2度か3度くらいだと思うんですね。でもそれはチャレンジングではあるけど「やれる事」なわけ。みんなゲーム関係者だから、いいゲームが出たらみんな喜んでくれる。同一の方向を向いてるんで、どれだけ満足してもらえるかは、単純に僕ら作り手の責任なんですよ。でも、株主にはゲームとか興味ない人もいっぱいいますからね。
          つまり、先ほどのハッピーになる3者以外に株主さんが・・・
板垣 4者目が出てきてしまうと、法律が保証する当然の権利として彼らが何らかの主張をした場合に、それが僕らが一番大事にしたい「3者の満足」というところに対して暗い影を落とすシチュエーションがままある。だから独立したんですよ。
          そのためにこのヴァルハラゲームスタジオを?
板垣 そう。だから1年1本100万本を売る必要がないんですよ。そもそも2年かけていたら400万本売れたかもしれないじゃないですか(笑)
          それは素晴らしい事ですね。その2年かけてやることによって、先ほどおっしゃられていた「面白いものを作って3者それぞれ一番いい形」を目指されるという事ですね。
板垣 そういう事です。
          募集されてくるプログラマーさんに向けても一言お願いします。
どんなにいい企画があっても、いいプログラマーなしでは実現できないとも聞きますが?
板垣 うーん、それはどうだろうね。林業やってる人がいなかったら家建たないですよね?あるいは釘を作ってくれる人がいなくても家は建たない。プログラマーというのは大工さんだから。大工さんが偉いとかそういう話はなくて。仮に絵描きさんが林業だとしましょう。また色々な道具を作るサポート部隊、要りますよね?トンカチとか。トンカチなしでは家は建たないから。
          確かに。
板垣 今ここにいる人はみな大工であって、僕はそこの棟梁と言うことです。ですから、どういう人に来て欲しいかと言ったら、そこに誇りを持てる人という事だよね。
          なるほど。
板垣 今、世界と戦えるチームが日本にいったい何チームあるんですかと。
          なかなか無いですね。
板垣 僕たちはもうずっと世界と仲良く戦ってきたんで。
          仲良く戦われてきたんですか?
板垣 いい意味で切磋琢磨という事ですよ。だから「自分の腕で世界中のお客さんに楽しんでもらう」「エンターテイメントを通じて世界に自分の影響力を行使してみたい」そういう人に来て欲しいよね。
          分かりました。
今日はどうもありがとうございました。
一同 ありがとうございました。



写真: (C)板垣プロダクション  撮影: Ryuga Shinno.